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2008.02.09 (Sat)

陰陽師

今から十何年も前。
我が家に一通のはがきが届きました。

年末年始のアルバイト募集(巫女)。

み、みこ!?
あの緋色の袴のアレですか?

アルバイトで袴をはけるのは
1.もちろん巫女(破魔矢の製造と販売)
2.結婚式場(神前式があったときだけ)
3.隣接市にある明治大正ロマン風のレストランのウェイトレス

くらいしか思いつきません。
俄然やる気を出して差出名を見ると、

貴船神社

ええ、しってます。かなり位の高い神社ですね。
子供の頃一度お参りに行きました。
とても広く、高い杉木立の中にあって、不思議な雰囲気で、山の中だけどうっそうとした感じはなく、適度に開けた穏やかな神社でした。

それは私の住居から遥か東の山中にあり……

車で2時間かかります

そんなとこ行けるかーー!!

……というわけで諦めました。



それから十年。
新聞に面白い小説が連載されていました。

陰陽師

そう、清明と博雅コンビのあの陰陽師です。

京の都の洗練された雅の世界。
かと思えば、庭に咲く、枯れかけの野をそのまま持ってきたような清明の庭。
殿上人達の華麗な世界。
博雅の奏でる美しい笛の音。
かと思えば魑魅魍魎の世界。

そう、陰陽師といえば、京の都、不思議な式神、もののけ、鬼、精、百鬼夜行、木火土金水の陰陽五行、不思議なまじない……

……と見せかけて主人公二人の酒飲み話。
もちろん清明も博雅も高貴な人々ですが、この二人の会話は……

おちょくる清明と、ムキになる(もしくはすねる)博雅。

陰陽師の文庫版は短編集ですが、どの話もまず冒頭はこの二人の酒を酌み交わす場面と……どうしようもない会話。
もちろん清明はごくまっとうに呪について話しているのですが、読んでいるほうも博雅のように、なんだかだんだん頭の中がクエスチョンマークだらけに……。

その会話の目の前では、酒の肴のあぶった魚が、食われて骨だけなのにするする泳ぎだしてみたり、萱ネズミがしゃべってみたり。

博雅は高貴な身分であり、有名な楽士でもあり、武人でもありますが……それでも呪の話は

『わけがわからないのだよ』

ということのようで……。
しまいには博雅、

『また呪の話をして(わざと)俺にわからなくさせてるだろう』
『また呪の話か』
『からかっているだろう』

などと、怒り出す始末。
清明の博雅に対する『良い漢だ』という賛辞も、褒めているのかからかっているのか、判別し難いときすらある始末。
話のたびに冒頭、このやりとり。毎回ニヤリとさせられます。
結局うやむやにされた博雅、毎回この後に清明とともに『う、うむ』『行こう、行こう』と二人で出かけていくわけで。
羅城門や宇治拾遺集、雨月物語などを思わせる話が幾つもある陰陽師ですが、この二人の性格や会話のためにいつもニヤニヤしながら読んでます。



さて、新聞に連載されていたものは長編で、後に文庫でも出版されました。

金輪。
もしくは生成り姫。

夜、あまりの心地よさに笛を吹き始める博雅。
その音に誘われ、見知らぬ姫に出会います。
どこの姫かわからないのですが、博雅、気になって仕方がない。

しかし姫は、やがて頭に金輪を逆さまにかぶり、そこにろうそくを立て、ある時間にになったら貴船山へいって藁人形に五寸釘を……。

そう、丑の刻参りです。
そんなお参りを続けている狂気のうちに、姫はだんだんと生成り(鬼になる一歩手前の状態?)になってしまいます。

その丑の刻参りに霊験あらたかなのが……あの貴船神社!
そうか、そういうご利益もあるのか……。

金輪の見せ所は、美しい女性と博雅の笛の音が結んだ不思議な縁。
醜い生成りとなってしまった姫に、それでも愛しそうに語りかける博雅が何ともいえません。



さて、この金輪、文庫本になったときに早速書店へ買いに走りました。
私、ヘタなりにも小説を書いている身です。
手には陰陽師の他にも小説の資料に使うべく様々な本が……

1.陰陽師
2.暗号・諜報の本
3.どたばたライトノベル
我ながらどういう組み合わせだ……

本屋の店員に凄まじく怪しい目で見られました……。
他にも陰陽道の本とかトリック解説本(江戸川乱歩著)とかニューヨークの裏の町の説明の本とかマイナーな神話とか常識では解けないクイズ本とか妙な組み合わせで買い……毎回白い目で見られながらお会計。


ところで自宅の近所にほとんど誰も行かない小さな神社があって、町の小さな神社なのに何故か宮司さんもいるし和太鼓もあるし、意外と位が高いらしいなと思ってたのですが……

子供の頃、丑の刻参りの痕跡の発見騒動が

どうやら貴船山の系統のようです……。

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