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2008.02.16 (Sat)

一つの指輪 Lord of the Ring

一つの指輪は全てを統べ
一つの指輪は全てを見つけ
一つの指輪は全てを捕らえ
暗闇の中に繋ぎとめる
影横たわるモルドールの国に

九つの指輪、七つの指輪、三つの指輪。
そして一つの指輪。

いろいろ伝わる指輪の中で最も呪わしい言い伝えをもつのが、一つの指輪。
そう、指輪物語……ロード・オブ・ザ・リング。

今回はネタは封印。
ちょっと真面目に語らせていただきます(どこが?)。
→強烈に長い文面を無視してネタだけ見たければ末尾へドウゾ……。

ファンタジーの源流とも呼ばれる壮大な物語。
昔は分厚いハードブックの本で、途中で挫折する人が多数。
私もその一人。
いや、量以前に話の難解さについていくことが出来ず、また当時の翻訳が独特で、現代の小説に慣れていると若干違和感を感じるのも原因だろう。
……巻頭のほとんどをパイプ草の楽しみ方など世界観や生活の説明に割いているのも一因だが……。

さて、その難解なストーリーだが、それ以前に。

主人公は誰か。

呪いの指輪を破壊する、その過酷な旅路をメインと取れば、もちろんフロド・バギンズが主人公だ。

しかし。

中つ国の、そのなかでも人間の歴史をメインに見れば、伝説と戦記、失われていた王が帰ってくる……アラゴルンが主人公ともいえる。

そしてややこしいことに、指輪物語にはもう一つ、別の指輪物語がある。

ホビットの冒険。

ダークな面もあるロードオブザリングとは多少雰囲気が異なり、ワクワクするファンタジックな冒険物語。
伝説の彼方に埋もれていた指輪が再び姿を現すまでの話、つまり指輪物語に至る前までの話だ。
この主人公こそ、ビルボ・バギンズ。
小さき人とよばれるホビット族の1人だ。
フロドの養父であり、遠縁の親戚でもある。
ビルボの所持していた指輪は遡れば更にやはりホビットのスメアゴル……つまりゴクリが所持していた(ホビットも幾つかの族に分かれていて、スメアゴルはフロドたちの一族とは多少異なるようだ)。

そう、指輪の主人。

Lord of the Ring

ビルボの指輪がフロドへ託され、小さなホビットの冒険は大きな指輪の物語へと動き出す。

原作者は言語学者でもあったトールキン。
子供向け児童文学として書いたホビットの冒険が大ヒットし、請われて発表したのが、その続編……いや、もう続編と言うレベルの話ではない。
児童文学とはいえない、非常に壮大で難解な物語が出来上がった。

トールキンは物語を書いたのではなく、世界を創造した……といわれるが、まさしくその通りだろう。
何千年にわたる歴史の詳細、神の代からエルフ、ドワーフ達の時代、人間の時代の複雑に絡み合う歴史。
そして特筆すべきはそれぞれの言葉。
エルフ達の使うクェンヤ語を筆頭に、様々な言語が行き交う。
これは言語学者であったトールキンが作り上げた言語体系で、単語はおろか文法や発音まで作りこまれている。

つまり、指輪物語を翻訳する人は、まず原作を英語に訳し、それからそれぞれの言葉に訳すのだから大変であっただろう。

日本語訳は現代の我々には非常に難しい。
語尾がですます調で書かれているのもそうだが、単語も無理矢理日本語に直したような感じで、理解するまで苦労する。

ホビット庄。
ホビットの村、つまりシャイアのことである。
現在でもイギリスなどでデボンシャーなどという知名があるが、そのシャーに当たるいわば行政区のことだ。

つらぬき丸。
カタナ風の名前だが、これはスティングという剣のことだ。

日本訳の極めつけは。

馳夫

ストライダーと呼ばれる野伏、つまりレンジャーのようなものだが、これはアラゴルンのことである。
アラゴルンをさすがその職業(?)を指しての暗示なわけで、決してアラゴルンの名前が『馳夫』という訳ではない……。

元々原作が、英語部分と創作言語、更にその創作言語も人間の言葉やらエルフの言葉やら混ざって飛び交うので、慣れるまで大変だ。
映画でもアラゴルンとレゴラスがエルフ語(クェンヤ語)でやり取りするシーンがある。
(原作を知らない方にはわかりにくいが、アラゴルンにはわずかにエルフの血が混ざっている)

ガンダルフ。
とんがり帽子に杖、ローブ姿と、いわゆる魔法使いのイメージの原型になったとも言われる。
彼の呼称は灰色の魔術師、もしくはミスランディアと直接カナ書きで書かれることもある。
このミスが指輪物語の創作言語で灰色を表す。
『灰色の銀』つまりミスリルは有名だろう。
ミスリルは指輪物語を飛び出し、多くの小説やゲームで特別な金属と言う設定に使われているほどだ。

ローハン。別名、マーク。
馬の司の国。
マークはマルクともいうが、これは古い英語やゲルマン語でも使われ、領土、土地などの意味を持ち、我々にも馴染み深い。
東の国、オストマルク。
デーン人の土地、つまりデンマーク。

トールキンにとって指輪物語は言語学者としての集大成でもあっただろう。
物語ではなく世界を創造した、そういわれる。
然り。
しかし、別の評価もまた然り。
つまり、神話を現実世界に置き換えた、とも。
もちろん現実世界とはいえ我々の住むこの世界とは違うものの、歴史にはない、あったかもしれないヨーロッパ的地理に当てはめてもおかしくはないといわれる。

指輪物語の源流は北欧神話やゲルマン伝説に見て取れる。

ガンダルフ。
古代ノルド語(つまりゲルマン語(ドイツ語)圏で、北欧方面の言葉)でゴンド・アルフ(エルフ)。
直訳すると魔法の妖精と言う意味だ。

エレンディル。
これもまた北欧神話だ。

レゴラスの故郷マークウッド。
北欧神話のミュルクウィズ、暗き森のことだ。

呪われた宝物。
ラインの黄金、ニーベルンゲンの指輪。
そう、まさしく持ち主を貶める呪われた指輪。

ナルシルの剣、のちのアンデュリル。
折れた剣を人間なるざる業で鍛えなおし、より名剣となす……これは様々な神話や伝承に見られる。
指輪物語ではこの剣はエルフ達が鍛え直す。

金属精錬と言うとドワーフを思い浮かべるだろう。
ドワーフ、つまりドゥエルガル。
黒小人とも呼ばれる彼らはすなわち北欧神話のスヴァルト(黒い)・アールヴ(エルフ)。
北欧神話では主にアルヴィスと呼ばれる小人達で、輝かしい武具も作るが、呪いの品も枚挙に暇がない。
ラインの黄金に関わり、フレイアの首飾りに関わり、持ち主を不幸におとしめるティルウィングの剣に関わり……。

一つの指輪は暗黒の王の指輪。
持ち主に干渉し、闇に引きずり込んでいく。
この干渉に耐えつつ、唯一破壊できるオルドルイン火山に向かうフロドの旅。
無邪気なホビットでなければ耐えることは難しかっただろうし、純粋なフロドだから出来たことでもある(それでも何度も誘惑に負けかけ、最後も誘惑に負けたがために破壊できたという皮肉もあるわけだが)。
誘惑に負ければゴクリのようになっただろう。

指輪物語には他にも幾つかの指輪が登場する。
九つの指輪、七つの指輪、三つの指輪。
三つの指輪はエルフたちにもたらされ、そのうちの一つ、水の指輪は映画でもガラドリエルが身につけていた。
また、映画では王の末裔、ドゥネダインであるアラゴルンも蛇の絡まる指輪を身につけている。

指輪物語は中つ国の歴史において、エルフの歴史が幕を閉じ、人間の歴史に移る期間でもある。
その象徴のように、最後、エルフ達は灰色の港から西へと旅立っていく。
行く先はヴァリノール、ヴァラールたちの住まう大陸であり、楽園、この世とあの世の中間のような意味合いも持つ場所だ。
象徴のように時折言葉の出てくるヴァラールは、神のような存在だ。
旅の仲間に、1人紛れ込んでいる。
言わずもがな、灰色の魔術師である。

映画は非の打ち所のない作品であると思う。
しかし、原作ファンからの批判も根強いらしい。
重要なシーンをカットしたり、キャラクターの位置づけを変えたりしたためだが、これは映画化に当たり必要なことでもあると思う。
映画を見れば原作のわかりづらさがかなり解消されるし、また原作を読めば映画で説明の省かれた部分やシーンに至る理由や背景がわかる。
ぜひ両方を見ることをお勧めしたい。
出来れば北欧神話も。

といいつつ、原作を途中で挫折した私ではあるが。

トールキンは更にシルマリルの物語というものも残し、これは指輪やホビットよりも更に太古の時代を書いたものである。
他の2作と比べて本屋などで見かけないのが難点だが、これもいつか読んでみたい作品だ。

フロドの旅の物語、アラゴルンの王の帰還の物語。

一つの指輪は全てを統べ
一つの指輪は全てを見つけ
一つの指輪は全てを捕らえ
暗闇の中に繋ぎとめる
影横たわるモルドールの国に

一つの指輪の物語、移り変わる指輪の主たちの運命の物語。

ロード・オブ・ザ・リング
Lord of the Ring

ながらく

Road of the Ring

だと思っていたのは内緒だ。
……だってフロドの旅の話と思えば間違いではない……と思いたい。

→【結局ネタに落ち着くネタのタネ】
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